目次
- 特定技能・介護分野の現状
- 訪問介護の解禁はいつ?政府は今年2025年の春には訪問介護を可能にする方針
- 訪問介護における特定技能外国人の受け入れ要件は?
- 前提条件:特定技能「介護」の在留資格を持っていること
- ①訪問介護等の業務の基本事項等に関する研修を行うこと
- ②1号特定技能外国人が訪問介護等の業務に従事する際、一定期間、責任者等が同行する等により必要な訓練を行うこと。
- ③ 1号特定技能外国人に対し、訪問介護等における業務の内容等について丁寧に説明を行いその意向等を確認しつつ、キャリアアップ計画を作成すること。
- ④ ハラスメント防止のために相談窓口の設置等の必要な措置を講ずること。
- ⑤ 1号特定技能外国人が訪問介護等の業務に従事する現場において不測の事態が発生した場合等に適切な対応を行うことができるよう、情報通信技術の活用を含めた必要な環境整備を行うこと。
- 特定技能外国人が訪問介護サービスをする際に、介護福祉士の資格は必要?
- 技能実習に関する訪問介護の要件は?
- 訪問介護における特定技能外国人の受け入れのメリットとデメリットは?
- まとめ
日本の高齢化は急速に進行しており、特に介護分野においては深刻な人手不足が問題となっています。この問題に対処するために、政府は外国人労働者の受け入れ拡大を進めており、その一環として、特定技能の資格を持つ外国人が介護分野、特に訪問介護に従事できるようにする方針を発表しました。
本記事では、特定技能の介護分野における訪問介護解禁の時期や要件、そしてそのメリット・デメリットについて詳しく解説します。
特定技能・介護分野の現状

介護分野でも外国人労働者の受け入れが進んでおり、特定技能1号についても多くが介護施設で働いています。
介護業界は日本国内で最も人手不足が深刻な業種のひとつであり、特定技能の外国人労働者はその不足を補う重要な存在となっています。2025年時点では、介護分野で特定技能1号を持つ外国人は約43,233人にのぼり、その数は年々増加しています。

訪問介護の解禁はいつ?政府は今年2025年の春には訪問介護を可能にする方針
これまで訪問介護の分野では、外国人労働者の受け入れに一定の制限がありました。主に、訪問介護は介護施設とは異なり、事業所と離れた場所において、利用者との密接なコミュニケーションが必要とされるため、外国人労働者が現場で十分に機能するかどうかが懸念点とされて議論が続いていたためです。
しかし、2025年に団塊世代が75歳以上となり、介護の需要が一層高まることが予想される中で、政府は外国人労働者の受け入れ拡大を決定しました。その一環として、特定技能の介護分野における訪問介護が解禁されることが発表されました。
政府の方針として、解禁時期は2025年の春となっており、これにより、特定技能1号や技能実習生としてすでに日本で働いている外国人が、訪問介護の現場でも働けるようになります。
参考:YahooJapanニュース「外国人の訪問介護、今春拡大へ 特定技能と技能実習で解禁」
※2025年2月時点、厚生労働省に確認した内容※
- 技能実習→2025年4月1日
- 特定技能→未定だが、2025年の4月中に目指している。
こちらは最新情報が入り次第、またお伝えします。

訪問介護における特定技能外国人の受け入れ要件は?

特定技能外国人が訪問介護に従事するためには、いくつかの要件を満たさなければなりません。これらの要件は、外国人が適切に介護業務ができるようにするための基準が下記の通り設けられています。
① 1号特定技能外国人に対し、訪問介護等の業務の基本事項等に関する研修を行うこと。
② 1号特定技能外国人が訪問介護等の業務に従事する際、一定期間、責任者等が同行する等により必要な訓練を行うこと。
③ 1号特定技能外国人に対し、訪問介護等における業務の内容等について丁寧に説明を行いその意向等を確認しつつ、キャリアアップ計画を作成すること。
④ ハラスメント防止のために相談窓口の設置等の必要な措置を講ずること。
⑤ 1号特定技能外国人が訪問介護等の業務に従事する現場において不測の事態が発生した場合等に適切な対応を行うことができるよう、情報通信技術の活用を含めた必要な環境整備を行うこと。
出入国在留管理庁「介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」
こちらについては現時点(2025年2月)の情報です。また、現時点では「案」となっているため、確定ではないことに留意してください。※随時更新しています※
特定技能外国人が訪問介護に従事するにあたり必要な条件について、下記詳しく解説していきます。
前提条件:特定技能「介護」の在留資格を持っていること
まず第一に、特定技能の介護の在留資格を所有していることが必要です。特定技能の介護の在留資格について、要件や日本語能力、試験についてはこちらで詳しく解説しています。
①訪問介護等の業務の基本事項等に関する研修を行うこと
特定技能外国人が訪問介護を行うためには、「介護職員初任者研修」を修了していることが求められます。
介護職員初任者研修は、介護の基本的な知識と技術を学ぶための研修プログラムで、介護職に就くための最初のステップとして位置付けられています。介護業界で働くためには、一定の教育と研修を受けることが求められることが多く、特に初心者や未経験者にとっては、この研修を受けることがキャリアのスタートとなります。
介護職員初任者研修は、理論的な学習と実技的な練習を組み合わせたカリキュラムで構成されています。一般的な研修内容には、以下のような項目が含まれます。
- 介護の基本
介護の概念や介護職の役割について学びます。介護の目的や介護者としての心構え、倫理的な問題についても学びます。 - 介護の実践技術
高齢者や障害者の身体的・精神的な特性を理解し、介護技術の基本を学びます。食事介助、排泄介助、移動補助、入浴介助など、日常的な介護業務を実践的に学びます。 - 介護記録の作成
介護業務における記録の重要性と、適切な記録方法について学びます。これにより、業務の正確な把握とコミュニケーションが円滑になります。 - 安全管理と事故防止
介護現場での事故を防止するための基本的な安全管理の方法を学びます。身体介助の際の安全確保や、介護用具の使い方、感染症対策などが含まれます。 - コミュニケーション技術
介護を行う上で重要な、利用者とのコミュニケーション技術についても学びます。利用者との信頼関係を築くために必要な対話術や、非言語コミュニケーションの重要性についても触れられます。
介護職員初任者研修の受講期間は、通常約130時間程度で、座学と実技を合わせた研修が行われます。受講者は、講義や実習を通じて必要な知識と技能を習得し、最終的に試験を受けることになります。この研修を修了することで、「介護職員初任者研修修了証」が授与され、介護職として働くための基礎資格を得ることができます。
受講資格に関しては、特別な学歴や職歴は必要なく、基本的に誰でも受講可能です。
またこちらに加えて、特定技能外国人に対して、文化やマナーの理解を促す研修を行うことも求められます。こちらは社内で行う研修で対応が可能です。(※社外で受けても問題ありません)

②1号特定技能外国人が訪問介護等の業務に従事する際、一定期間、責任者等が同行する等により必要な訓練を行うこと。
特定技能外国人が訪問介護に従事する際に、いきなり一人で業務に従事させることはできません。介護施設で行う介護と違い、初めは聞きたいことがあっても誰もいない場合は聞けなかったり、何かトラブルが起こっても一人で対応できないことがあるため、必ず一定期間はほかのスタッフや責任者が同行し、業務に慣れるまで見守る必要があります。
③ 1号特定技能外国人に対し、訪問介護等における業務の内容等について丁寧に説明を行いその意向等を確認しつつ、キャリアアップ計画を作成すること。
介護サービスに従事する特定技能外国人に関して、キャリアアップ計画の要件が追加されています。キャリアアップ計画にはフォーマットがあり、提出する必要があります。こちらについては詳細がまだ決まっていないため、2025年の4月中旬に公開できるよう現在準備が進められています。
④ ハラスメント防止のために相談窓口の設置等の必要な措置を講ずること。
訪問介護に関しては、利用者からのハラスメントが起こった場合でも相談しずらいことがあります。そのため、相談窓口等を設置することが求められます。
⑤ 1号特定技能外国人が訪問介護等の業務に従事する現場において不測の事態が発生した場合等に適切な対応を行うことができるよう、情報通信技術の活用を含めた必要な環境整備を行うこと。
訪問介護は、サービス利用者の自宅などに出向いて介護を行う特性から、不測の事態が発生した場合、対応に迷っても誰にも聞けないという事態が発生する可能性があります。
そのため、携帯電話やタブレットなどで、特定技能外国人が何か困った際にすぐに上司や同僚と連絡を取れるように環境を整備することが求められます。
特定技能外国人が訪問介護サービスをする際に、介護福祉士の資格は必要?
介護福祉士は、介護の専門職として、高齢者や障害者などの生活支援を行うための国家資格です。介護福祉士は、介護職の中で最も専門的な知識と技能を有する職業であり、利用者が自立した生活を送るために必要な支援を行う重要な役割を担っています。
特定技能外国人が訪問介護サービスに従事する際に、介護福祉士の資格が必要なのではないか?という情報が出ていますが、現時点(2025年2月)では、介護福祉士の資格は不要ということで出入国在留管理庁より回答がありました。介護福祉士の資格を持たない方でも一定の基準を満たせば従事することが可能となります。
技能実習に関する訪問介護の要件は?
特定技能外国人のみならず、技能実習生に関しても訪問介護サービスに従事することができるようになります。技能実習生の要件については、下記で詳しく解説されています。
訪問介護における特定技能外国人の受け入れのメリットとデメリットは?

訪問介護における特定技能外国人のメリット
①介護業界の人手不足解消
特定技能外国人が訪問介護サービスに従事できるようになることにより、介護業界の最も大きな課題である人手不足の解消が大きなメリットと言えます。
以前より、介護分野の施設より訪問介護の解禁を望む声は少なくありませんでした。訪問介護の需要が増加する中で、外国人労働者が加わることで、即戦力となるスタッフを確保でき、介護サービスをより多くの高齢者に提供することができます。
②介護サービスの質の向上
介護分野において外国人が働くことにより、多様なバックグラウンドを持つ外国人労働者が訪問介護に従事し、介護の現場に新たな視点がもたらされるメリットがあります。それにより、日本人だけでは気づけなかった点や、通訳翻訳が必要な外国人の高齢者に対する対応についても幅を広げることができます。
これにより、介護サービスの質が向上し、利用者に対してより柔軟で多角的なサポートが提供できるようになります。また、外国人労働者が持つ他国の介護技術や知識を活用することも可能となります。
③長期的な労働力の確保
特定技能1号の特定技能については、最大5年間の契約期間が設けられていますが、その後は資格を変更することで在留資格の更新も可能です。これにより、長期的に介護業界で働くことができ、安定的な労働力確保を実現することができます。
また、5年といった比較的中長期で働くことができる特定技能外国人が職場に定着することによって、介護施設や訪問介護事業者は、人員不足に悩まされることなくサービス提供を続けることができます。

訪問介護における特定技能外国人のデメリット
①利用者との間で日本語での意思疎通に問題が発生する可能性がある
訪問介護では、利用者との信頼関係を築くために高度なコミュニケーションが求められます。特に高齢者の中には、認知症を患っている方や、体調が不安定な方も多いため、言葉のやり取りに工夫が必要です。
特定技能外国人と利用者の間でコミュニケーションを行う場合、特定技能外国人が伝えたいことが日本語能力によって制限されることがあります。その結果、日本語に不安を抱えている場合、サービスの提供において困難が生じる可能性があります。
そのため、十分な日本語能力を持っていることが求められると同時に、介護施設でも日本語の十分な研修を絶えず続けることが求められます。
日本語教育についてはこちらの記事が参考になります。
②文化的な違いにより、特定技能外国人や利用者が不安を覚える可能性がある
特定技能外国人が日本の文化や介護の慣習に適応することも課題の一つです。介護の現場では、細やかな気配りや、日本独自の介護の文化に対する理解が必要です。
こちらは訪問介護に限ったことではありませんが、特定技能外国人が日本の介護現場に適応するには、研修や支援が不可欠です。文化的な違いを理解し、柔軟に対応できるようになるには、時間と努力が必要となります。
また、現時点では介護事業者や外国人材の受け入れを行う団体が、介護事業者にはサービス利用者やその家族に外国人材が訪問することを説明するように事前の対策を行うなど求めていく予定です。
参考:日本経済新聞「訪問介護、特定技能外国人も可能に 研修の修了など要件」
③訪問介護において、目の届かない場所でトラブルが起こりやすくなる可能性がある
訪問介護では、特定技能外国人が介護が必要な利用者の自宅に訪問して介護を行います。通常、介護施設で働く場合は職場の上司や同僚が、困ったときやトラブルの際にすぐにサポートに入ることができますが、訪問介護においては密室でトラブルが起こることもあり、迅速なサポートができない可能性があります。
対策としては、介護職員が利用者の状態やサービス内容を記録することが求められますが、記録が不十分だったり、誤った情報が記載されていたりすると、トラブルの原因になります。そのため、何かトラブルが起こった際の手順なども特定技能外国人と共有しておくことが大事です。

まとめ
特定技能の介護分野における訪問介護解禁は、介護業界にとって重要な転換点となります。日本の高齢化が進む中で、訪問介護の需要はますます高まり、その提供者が不足している現状を解消するためには、外国人労働者の受け入れが不可欠です。
訪問介護が解禁されることにより、業界の人手不足を解消するための大きな助けとなりますが、日本語能力や文化的な適応、労働環境の改善など、解決すべき課題も多くあります。これらの課題に取り組みながら、外国人労働者が活躍できる環境を整備していくことが、介護業界の未来にとって重要な鍵となるでしょう。
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※本記事は現時点(2025年2月)で確認が取れている情報となります。制度変更や書類の書式変更などで内容が変更になることもございますので、実際に申請する場合は必ず出入国在留管理庁や在外公館まで直接お問い合わせいただくようお願い致します。